クロエマーシーラウンドファスナー長財布
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null 呆気《あつけ》なく返事が返ってきた。由美の声はけだるげにかすれていた。 「住んでるところは知らないかい?」 「西新宿のキングス第二マンションというところのはずよ。訪ねていったことはないんだけど」 「一人でそこに住んでるのかい?」 「だと思うわ。でも、誰に頼まれて、めぐみちゃんを探してるの?」 「おれは借金の取立屋なんだよ」 「あら、めぐみちゃん、まだ借金の残ってるところがあったの?」 「おれは銀座のほうの、ホステス専門に金を貸してるサラ金会社に取立て頼まれたんだけど、二百万近く残ってるんだよ」  矢田は由美の体をまさぐる手を休めずに、出まかせを並べた。 「二百万も……。あの子、新しく勤めることになったクラブから前渡金《バンス》が入ったから、借金は全部払えた、なんて言ってたのよ。それは嘘じゃないと思うの。あの子がお店辞めたあとで、借金取りが来たのは、あんたがはじめてだもん」 「それまでは借金取りがよく来てたのか?」 「もう、しょっちゅう。小口は体で払うんだ、なんて自分で言ってたもの」 「どうしてそんなに借金ができたんだろう?」 「シャブやってたって話よ。同棲してたチンピラに仕込まれたらしいの。そのチンピラはなんとかって組の組長を殺して、いま刑務所にいるけどね」 「ひでえのと同棲なんかしたもんだな」  矢田は二本の指を由美の中にくぐらせながら、何も知らぬふうを装って言った。 「そうなのよ。やっぱり男のほうがよかったのね、きっと……」  由美は、くぐり入ってきた二本の指を、さらに深く捉《とら》えようとするかのように、腰をうごめかせた。